カカオの品種は3種類だけではない?

チョコレートの原料であるカカオ。

今回はそんなカカオの品種について詳しく書いていきます。

カカオの品種は3種類が知られている

カカオの品種には、大きく3種類に分類されて知られています。

  1. クリオロ種
  2. フォラステロ種
  3. トリニタリオ種

希少価値が高いクリオロ種は、カカオの品種の中では最も有名なため、知っている人も多いのではないのでしょうか?

大きさや形、味や香りなど特徴がそれぞれ異なります。

ですが、カカオの品種は、決してこの3種類しかないわけではないのです。

種類というよりも系統

もともとカカオは品種交配をしやすい植物であり、個体差はありますが、現存するカカオのほとんどは、過去に他の品種と交配されたことがあるものになります。

そこで原種であるとされるクリオロ種を筆頭に、フォラステロ種、トリニタリオ種の3つを中心とした系統別に大きく分けられるとされており、カカオの品種といえばこの3種類が代表として多く知られているのです。

カカオの品種の場合は、3種類というよりも3系統種という言い方の方が分かりやすいのではないでしょうか?

ですが、カカオの品種についてはまだ研究段階の途中で、現在でも未解明なことは多いのが実状です。

近年では、カカオの品種をさらに遺伝子的に解析することで、約10種類ほどのグループに分けられると提言されており、さらなる研究が続けられています。

現在まで自然交配や人為的な品種改良によって、カカオの品種交配が繰り返されたことで、カカオの品種を細かく分類してみると、約100種類を超える種類があるとも言われています。

クリオロ種

クリオロとは、スペイン語で「自国のもの」「土着」「その土地生まれ」などの意味を表しています。

南米のアマゾン川上流地域を原産として、主に中米や南米の一部でのみで栽培されている貴重な品種となります。

クリオロ種は、品質が良く香りの良いカカオ豆として有名ですが、害虫などの抵抗力が弱く、病害にも耐性を持たないため栽培が難しい品種もあります。

そのため現在でも、全体のカカオ豆の生産量の約1~5%ほどといわれており、南米のごく限られた地域でのみで栽培されています。

一時期、病害によって多くのクリオロ種が壊滅してしまったことがあり、全体の生産量の0.1%にも満たない量に激減するなど、かつては絶滅が心配されたことのある品種でもあります。

そのためクリオロ種は「幻のカカオ」とも呼ばれています。

栽培が難しく、他の品種との交配があまりされてこなかったことで、クリオロ種はもともとの姿をあまり変えていないとされ、原種に近いカカオといわれています。

特徴として、カカオの実の表面はデコボコとして、細長くやや膨らみのある見た目で、柔らかい皮で覆われており、カカオ豆は丸みのある形で断面の色は白色~紫色です。

苦みや渋みが少なく、味わいはまろやかで上質な芳香が特徴的、非常に良い香りを放つカカオ豆として主にフレーバービーンとして知られているカカオ豆です。

断面の紫色の成分は、ポリフェノールであり、アントシアニンという苦みの成分でもあります。

チュアオ

ベネズエラのチュアオ村に属する地域の一部でのみで栽培されているクリオロ種。

その村の名前からチュアオと呼ばれている歴史あるクリオロ系統種です。

チュアオは、クリオロ系統種の中でも最高品質とも名高く、その放つ芳香は高貴な香りとも言われています。

他のカカオと品種交配が行われないような特殊な環境下での栽培が続けられており、ただでさえ生産量の少ないクリオロ種の中でも入手が難しく、希少価値が高いことで知られています。

ポルセラーナ

同じくベネズエラで栽培されるクリオロ系統種で有名な品種として、ポルセラーナがあります。

ポルセラーナは、クリオロ系統種の派生種であり、高品質で雑味の少ない風味豊かなのが特徴です。

派生種とは原種とは異なり、品種交配か突然変異によるものかは定かではありませんが、クリオロ種から派生された種類となります。

スペイン語でポルセラーナとは「磁器」という意味を表し、その名の通り陶磁器のような白みを帯びた珍しい見た目をしたカカオの実だったため、ポルセラーナと呼ばれるようになりました。

こちらも原産地のベネズエラやペルーの一部などでしか生産がおこなわれておらず、栽培が困難で生産数も少ないため、クリオロ系統種の中でも希少な部類となります。

レアルクリオロ

レアルとは、スペイン語で「王家の」「王室の」という意味を指し、かつてスペイン王家によって支配されていたカカオ豆の品種といわれています。

クリオロ系統種の特徴として、まろやかな味わいで後味が残らないものが多いのですが、レアルクリオロはその中でも、穏やかで上品な味わいが特徴です。

偶然発見され復活させた品種とも言われており、そのような原種に近いクリオロ系統種を見つけるために、南米に探しに行く人もいるのです。

ベネズエラ北部では、チュアオやポルセラーナなどの原種に近いクリオロ種が多く生息しているため、カカオの起源ではないかともいわれています。

フォラステロ種

フォラステロとは、スペイン語で「よそ者」「よそ者の土地」「異国」という意味。

南米のアマゾン川上流部やオノリコ川上流部付近が原産といわれており、南米ではとくにブラジルが栽培地として有名ですが、主にアフリカや東南アジアなどで広く栽培が行われている品種となります。

病虫害に耐性を持っているため、クリオロ種と比較しても栽培が容易で、なおかつ成長速度が速く、一個体からの収穫量も多く生産性が高いことから、フォラステロ種の栽培が積極的に広まりました。

カカオ豆を扱う企業からみても、大量生産が可能なフォラステロ種はメリットが大きいため、流通しているカカオ豆生産量の約70%~90%を占めており、現在のカカオ豆の主流ともいえる品種といえます。

特徴として香りが少し弱いですが、苦みや渋みが強く、コクのある味わいが多いことが挙げられます。

フォラステロ種のカカオの実は、なめらかな表面をして丸みを帯びた見た目で、硬質な皮で覆われています。

中に含まれているカカオ豆は、やや小ぶりの平たい粒の形をしており、断面は濃い紫色で多くのポリフェノールを含んでいます。

アリバ種

エクアドル原産の固有種とされているフォラステロ種の派生種。

アリバ種または、ナシオナル種やナショナル種と呼ばれることも。

フォラステロ種特有の苦みは健在ですが、渋みが少なく花のような香りがするのがアリバ種の珍しい特徴であり、エクアドルの一部でのみで栽培されている希少種となります。

酸味や甘味

フォラステロ種の中では栽培が難しい品種でもあり、かつては栽培が容易な品種改良されたカカオの栽培へと移植が進んでいましたが、固有種が持つ独特の芳香が見直され、固有種であるアリバ種の栽培が続けられてきました。

エクアドルの生息する地で栽培されたものでなければ、香りのよいアリバ種は生まれないとも言われており、いまだ謎が多い品種でもあり、栽培地が限られている希少な品種でもあります。

トリニタリオ種

トリニタリオ種とは、クリオロ種とフォラステロ種を掛け合わせた交配品種。

主に、中南米、スリランカ、インドネシア、パプアニューギニアなどが栽培地として有名です。

現在ではとくに東南アジア地域で、トリニタリオ種の品種改良や栽培が活発に行われています。

西インド諸島のカリブ海地域にあるトリニダード島が原産地とされており、ハリケーンや病害など諸説あるのですが、かつてトリニダード島のクリオロ種が壊滅的被害を受けた際、栽培を続けようと持ち込まれたフォラステロ種が、まだ生き残っていたクリオロ種と自然交配が行われたことによって生まれた品種とされています。

そのためトリニタリオ種の名前の由来は、原産地のトリニダード島からできているとされています。

トリニタリオ種は品種改良が重ねられたことで、クリオロ種特有の高い品質や香りを持ち、フォラステロ種の高い生産力と病害への耐性を持つなど、両種の良い点を併せ持ったハイブリッド種となりました。

中でもクリオロ種同様に香りが良いのが特徴で、主に風味を加えるためのフレーバービーンとして、チョコレートをつくる際にブレンドに使用されるなど重宝されています。

トリニタリオ種は、全体のカカオ生産量の約10%を占めるとも言われていますが、中間種でもあるため、同じトリニタリオ種の系統でも形状や大きさ、香りの強さ、苦みや酸味などそれぞれ様々な特徴があります。

そのため、産地や固体によってバリエーションの違いが大きい品種ともいえます。

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