生クリームを泡立てる際、出来上がりの量がどれくらいなのか想像しにくいものですよね。
今回は、生クリームがどれくらい泡立つのかを、泡立つ理由から詳しく説明していきます。
生クリームを泡立てるとなぜ増える?
生クリームを泡立てた際、空気を含んでかさが増えているのだろうと想像できますが、そもそもなぜ生クリームを泡立てると固くなる理由は分かりますか?
生クリームのようなクリーム状のものはいろいろありますが、
泡立てることで気泡が含みながら角が立つような固さを持ちつつ柔らかいクリーム状を維持することは不思議な性質でもあるのです。
生クリームが泡立つ理由
まずは生クリームがなぜ泡立つのか簡単に説明していきます。
生クリームの成分には乳脂肪が含まれています。
この乳脂肪は脂肪球と呼ばれる球体状の形をしていて、この脂肪球が水分の中に分散して混ざった状態が泡立てる前の液体の生クリームになります。
乳脂肪が水分の中に分散しているということは、水の中に油が分離せずに混ざり合っている状態になります。
本来、水と油はお互い反発し混ざり合うことはないのですが、
なぜ生クリームでは含まれている水と油が分離せずに混ざり合っているのかというと、先ほどの脂肪球に秘密があります。
この脂肪球は膜に包まれています。
この脂肪球の膜の外側には、水分となじみやすい親水性と呼ばれる性質をしているため、これによって水分の中でも分離せずに脂肪球が分散して混ざり合った状態でとどまることができるのです。
このような状態を乳化と呼びます。
そんな液体の生クリームを泡立てると、分散している脂肪球1つ1つがクリームの中で動き回ります。
脂肪球が動きまわることで、脂肪球同士がぶつかり合います。
ぶつかり合うことで、互いの脂肪球の膜に傷がついていき次第に壊れていきます。
また泡立てることで、空気が生クリームの中に入ってきて気泡となります。
この気泡が先ほどの脂肪球の膜に含まれるたんぱく質を吸着することで、空気変性と呼ばれることを起こし、こちらも脂肪球の膜を壊します。
これによって膜が壊れた脂肪球が多くできます。
さらに泡立てていくことで膜が壊された脂肪球どうしが、再びぶつかり合います。
今度は、膜が壊れてないため脂肪球同士がくっつきあいます。
脂肪球がくっつきあう際に、泡立てた際に入った気泡や表面の空気を巻き込みながら脂肪球がつながりあうことでかさが増えていき、固さのある生クリームになります。
生クリームを泡立てた後の量
泡立てることで抱き込んだ空気が生クリームの中に小さな気泡として含まれる分、生クリームの体積が増えます。
生クリームの泡立てることで増える最大の体積はオーバーランという数値で現わされます。
オーバーランとは
生クリームやアイスクリームなどによく使われ、泡立てた際に乳脂肪によって抱き込まれた空気の量をが液体の状態と比べてどれくらい体積が変化したのかを示します。
生クリームのオーバーランは、いろいろな条件によって変化し、
生クリームに含まれる成分の種類や温度、泡立てる速度や攪拌力、使用する量や空気に触れる面積などによって差が生じます。
そのため同じ環境で同じ種類のものを使っていても、できる体積に違いが少なからずできることになります。
かさの量はどれくらい増える?
先ほど言ったように、泡立て加減や泡立てる環境などの条件によって変化するため、一概には言えませんが、
目安としては、200mlの生クリームを泡立てた際の最大体積は約2倍となります。
この場合、砂糖の重さは含まれず、動物性の乳脂肪分を使った生クリームになります。
植物性やコンパウンドなどの動物性と植物性混合のクリームは乳脂肪分のみを使った生クリームよりも少しオーバーランが優れており、体積も2倍よりも少しばかり大きくなります。
あくまでもかさの量が増えるだけ
空気を含んでいるだけのため、あくまでも生クリームの重さは変わりません。
生クリームと加えた砂糖の重さであって、抱き込んだ空気によって質感や食感などの味に関係してきます。
生クリームは大量に泡立てない
生クリームは大量に泡立てるのには向いていません。
生クリームが泡立つ仕組みからも分かるように、脂肪球同士がくっつきあう際に空気も一緒に抱き込むで生クリームが泡立ちます。
このとき、生クリームの量が多くなりボウルが深かったりして、泡立てる際に空気が入り込んで気泡が減ってしまったり、生クリームの表面に触れる空気の面積が減ってしまうことで抱き込む空気の量が減ってしまいます。
脂肪球同士は抱き込む空気が少ない状態でもくっつき繋がりあうため、泡立てる生クリームのかさの量が減ってしまいオーバーランの数値も下がってしまいます。
安定剤を含んだものや植物性のクリームは影響しにくく作られています。
家庭用で使う場合の量では影響はほぼないですが、乳脂肪分のみで作られた生クリームとくに乳脂肪分が高いものは、少量で泡立てるのが基本なのです。