テンパリングを行う上で、温度はとても重要になります。
変化させる温度のわずかな差の違いによって、テンパリングは失敗に繋がります。
じつはテンパリングの温度帯は使用するチョコレートの種類によってそれぞれ異なるのです。
今回はテンパリングにおけるチョコレートの温度について詳しく書いていきます。
まずはテンパリングの温度について、よく分かっていない方もいると思うのでわかりやすく解説していきます。
テンパリングの温度とは
チョコレートのテンパリングでは含まれるココアバターの結晶を一度溶かして、最適な結晶に作りなおすことで、結晶構造が綺麗に揃ったチョコレートにすることが目的となります。
そんな結晶を作り出すには温度が重要になります。
チョコレートを最適な温度帯で作業することで、状態のよい結晶ができるのを促すのです。
融解温度とは
融解温度とは、テンパリングをする際にチョコレートをとかす温度になります。
ただしチョコレートが溶ける温度ではありません。
チョコレートの融点(固体から液体になる温度)は、融解温度よりも低く、チョコレートを口の中の体温で溶けだすことからも分かると思います。
要するに融解温度とは、チョコレートに含まれるココアバターの結晶をすべて溶かすための温度であり、チョコレートに最適な結晶を作り直すために大切な最初のテンパリング作業になります。
冷却温度とは
冷却温度や下降温度とも呼ばれるテンパリングの温度です。
最適な結晶を作り出す温度帯よりも少し低めの温度帯を指します。
この冷却温度では、テンパリングの方法によって使用するかが異なり、水冷法やタブリール法などで冷却温度の少し低めの温度まで下げてから、再度少し温度を上昇させる場合に使用されます。
調節温度とは
調節温度や上昇温度、保温温度、作業温度ともよばれます。
チョコレートに最適な結晶が作られる温度帯であり、テンパリングの最終的な温度となります。
チョコレートを加工する際は、この調節温度を保った状態で作業を行っていきます。
テンパリング作業が終わっても、状態の良い結晶を維持するために調節温度よりも高い温度や低い温度にしないように注意が必要です。
基本のテンパリング温度
テンパリング温度の例として、テンパリングではチョコレートを融解温度50℃→冷却温度28℃→調節温度32℃のように温度を変化させていきます。
このテンパリング温度は、スイートチョコレートの製菓用チョコレートをベースとした平均的なテンパリングの温度になります。
テンパリングの温度は、それぞれチョコレートのメーカーや製品、種類によって異なります。
ビター・ミルク・ホワイトで異なるテンパリングの温度
チョコレートの種類はビター・ミルク・ホワイトの3つに分類されますが、テンパリングの温度帯もそれぞれで異なります。
この3種類のチョコレートは使用される原材料や配合量によって異なり、この原材料の違いがテンパリングの温度帯に影響を与えます。
粉乳を含むことによってテンパリング温度が低くなる
テンパリングの温度に影響を与えるチョコレートの原材料は、粉乳です。
粉乳はミルクチョコレートやホワイトチョコレートのみの原材料に配合され、ビターやブラックなどが分類されるスイートチョコレートには含まれません。
粉乳とは、ミルクから水分を取り除いてパウダー状にした全粉乳(全脂粉乳)やミルクから水分や乳脂肪分を取り除いてパウダー状にした脱脂粉乳などを指し、とくに全粉乳に含まれる乳脂肪分が関係します。
この粉乳に含まれる乳脂肪分こそがテンパリングの温度に影響を与えているのです。
テンパリングでは、チョコレートに含まれるココアバターの融点、つまり固体から液体になる温度を利用して、結晶をすべて溶かしてから再びチョコレートに最適な結晶に作り直す作業になります。
粉乳に含まれる乳脂肪分は、ココアバターよりも融点が低い性質をもち、固体から液体に変化する温度が低いため、粉乳が多く含まれるチョコレートでは溶かす際や結晶化させる温度が低くなるのです。
これにより乳脂肪分を含むミルクチョコレートやホワイトチョコレートは、スイートチョコレートと比較すると、テンパリングする際の温度帯が低くなるというわけです。
融解温度には注意が必要
粉乳を含むチョコレートでは融解温度、つまりは溶かす温度にはとくに注意が必要になります。
原材料に含まれる砂糖や粉乳は、水には溶けますが、油には溶けません。
チョコレートの主成分はカカオの油脂分であり、チョコレートの中はカカオの固形分や砂糖、粉乳が混ざった状態であり、その状態が冷えて結晶化した状態が固形のチョコレートなります。
そのためチョコレートは高い温度にさらされることで焦げたり、変質してしまうことがあり、もともとチョコレートは高温に弱いのです。
さらに粉乳の成分も高温にさらされることによって変質を起こしやすく、粉乳を含んだチョコレートは含まないチョコレートよりもさらに高温に注意する必要があるのです。
もしミルクチョコレートやホワイトチョコレートをとかす際、高温の状態においてしまい粉乳が変質してしまうと、チョコレートに含まれる砂糖と結合してしてしまい、なめらかな状態だったものがざらざらとした質感に変化してしまいます。
こうなってしまうと元には戻りません。
ホワイトチョコレートは粉乳の量が多い
ホワイトチョコレートは、カカオマスを含むスイートやミルクチョコレートと比較すると、とくに粉乳の量が多いチョコレートのため、テンパリングではとくに注意が必要になります。
とくにホワイトチョコレートをとかす際は、なるべく高温にさらさないよう注意しながら、部分てきに温度のムラができないように攪拌することが重要になります。
チョコレートは結晶化することによって粘度が増していき、温度が伝わりにくくなるため、チョコレートが部分的に高温になってしまいやすく、慎重な温度管理が必要となります。
なかでもホワイトチョコレートのテンパリングは難しいとされ、原材料の違いによってテンパリングの温度帯が狭まるなど失敗の要因が多くなるためなのです。
テンパリング温度とカカオの比率
チョコレートのカカオ分は、テンパリングの温度帯と深く関係します。
カカオ分となるカカオマスやココアバターの量によってテンパリングの温度帯が高くなります。
ただし、カカオ分といってもカカオの油脂分、ココアバターの含有量がポイントになります。
ココアバターの量が温度と関係
チョコレートに含まれるココアバターの量が多いほど、溶かした際に流動性がよくサラサラとした状態となりますが、ココアバターの含有量が多いほど、テンパリングの温度帯も高くなります。
くちどけの良さによる美味しさや流動性が高いことでの扱いやすさなどの点から、製菓用チョコレートではココアバターの量を多く配合されおり、テンパリングの温度帯が高いものになります。
日本の市販で売られている板チョコレートなどはカカオ分、とくにココアバターの含有量がひくく砂糖の量が多いことが多いため、一般的に製菓用チョコレートと比較するとテンパリングの温度が低くなります。
代用油脂の使用による影響
ココアバターの代用油脂として植物油脂が加えられていることがあります。
さまざまな種類の植物油脂を目的に応じて組みあわせているのですが、その中で使用される植物油脂の異なる融点を利用しています。
チョコレートの融点を高くすることで、夏場でも溶けにくくしたりするのですが、代用油脂を使用したチョコレートはテンパリングに大きく影響を与えます。
代用油脂はココアバターとは特性や融点も異なるため、テンパリングをする際の温度帯だけでなくココアバターの結晶化にも影響します。
チョコレートを溶かして加工する際などにテンパリングが必要なチョコレートを使用する場合は、クーベルチュールと呼ばれる国際規格でココアバターの含有量が多く、代用油脂の不使用を定められた製菓用チョコレートをテンパリングのしやすさの面でもおすすめします。
チョコレートのメーカーの違いによってテンパリングの温度が異なる
チョコレートメーカーによって、原材料の種類や配合量は様々なため、当然テンパリングの温度帯もわずかに異なります。
テンパリングにおいてわずかな温度の違いでも失敗につながることがあり、使用するチョコレートをテンパリングする温度帯を知ることは重要です。
チョコレートメーカーの公式サイトや製菓用チョコレートの中には袋に記載されているものもあり、テンパリングの前に確認しましょう。
大東カカオのチョコレートを使用する場合
- スイートチョコレート 融解温度50℃→冷却温度28℃→調節温度32℃
- ミルクチョコレート 融解温度45℃→冷却温度27℃→調節温度31℃
- ホワイトチョコレート 融解温度40℃→冷却温度26℃→調節温度30℃
ヴァローナのチョコレートを使用する場合
- スイートチョコレート 融解温度53℃~55℃→冷却温度28℃~29℃→調節温度31℃~32℃
- ミルクチョコレート 融解温度48℃~50℃→冷却温度27℃~28℃→調節温度29℃~30℃
- ホワイトチョコレート 融解温度48℃~50℃→冷却温度26℃~27℃→調節温度28℃~29℃
まとめ
- テンパリングでは融解温度・冷却温度・保温温度の3つの温度に変化させる
- チョコレートの種類によってテンパリングの温度が異なる
- チョコレートに含まれるカカオ分によってテンパリングの温度が異なる
- チョコレートのメーカーによってテンパリングの温度を異なるため要確認