スポンジケーキを作る際、レシピをさがしてみると共立てと別立てと書かれていることが多いと思います。
けれど、初めて作る人にはよく分からず、スルーしてしまうかもしれません。
実はこの2つの違いを知っておくと失敗しにくいスポンジ生地のレシピを探せるだけでなく、より美味しく作ることができることにつながります。
共立てと別立ての違い
まずスポンジ生地を作るには主に2種類の作り方があり、
それが共立て法と別立て法です。
この2種類の大きな違いは卵の泡立て方にあります。
簡単に説明しますと、共立てで作る際には全卵をを泡立ててつくるために卵を割って、そのまま泡立てて使いますが、
別立てで作る際には卵黄と卵白を分けてそれぞれ別々に泡立て作り始めます。
スポンジ生地は卵の気泡を含ませることによって焼き上げることで、ふっくらとした生地を生み出します。
それぞれの卵の泡立てかたで出来上がりに大きな違いが出るためしっかりと確認しましょう。
共立て法で作る生地とは
主に共立て法で作るスポンジ生地のことをジェノワーズと呼んでいます。
共立て法では、卵を割って卵黄と卵白を分けずに一緒に泡立てていきます。
全卵を泡立てて作る生地は、きめの細かい小さな気泡を多く含ませることができ、程よい弾力を持ったしっとり感のある生地ができます。
さらに気泡のきめをそろえることができれば、なめらかで口の中で溶けるような食感の生地を作り出すことができます。
また共立て法ではバターを加える配合例が多く、別立て法よりも多くの量を加えることができるなど、バター独自の風味やコクが加わり濃厚なクリームとも相性の良い生地に出来上がります。
しかしバターなどの油脂類は気泡をつぶしてしまう性質を持ち合わせており、生地に加える際は注意が必要です。
つくる際はバターを加えたら、素早く混ぜ合わせて型に入れ焼き上げることが大切です。
別立て法で作る生地とは
一般的に別立て法で作るスポンジ生地はビスキュイと呼ばれています。
卵黄と卵白をそれぞれ泡立てて作り、共立て法よりも気泡の量を多く含ませることができるため、ふんわりとしやすく軽いほろっとした食感の生地になります。
卵白に砂糖を加えて泡立てたものをメレンゲといい、卵黄を含んだ全卵よりも卵白のみを泡立てるほうが早く泡立ちやすくなります。
卵白をしっかりと泡立てたメレンゲを作ることで、気泡が壊れにくく硬さのある泡立ちに仕上げることができるため、別立て法で作る生地は絞り袋に入れてプレートに絞り、焼き上げることもできます。
ただし1つ1つの気泡の大きさは、共立て法の生地と比べるとやや粗くなりやすく、大きく膨らむことで食べるともろさのある食感を生み出すのが特徴です。
日本ではふわふわとしたソフトな食感を好む人が多い傾向があり、
別立て法で作り上げたスポンジ生地のほうが美味そうに感じる人も多いようです。
共立て法で作るジェノワーズとは同じ材料でも、それぞれ作るお菓子によって使い分ける必要があります。
共立て法と別立て法の比較
必要なもの
それぞれの作り方で必要なものに違いがあります。
主に共立て法の場合、湯せん用の鍋、温度計が必要になります。
一方で別立て法の場合、卵黄用と卵白用でボウルと泡だて器が一つずつ必要になります。
砂糖も卵黄に加える用と卵白に加える用それぞれ分けて計量するため、砂糖を入れておくカップなども2つ用意しておきましょう。
作業性の違い
共立て法では湯せんで温めて卵の温度調整を行う必要がありますが、1つのボウルで生地をつくることができます。
別立て法では卵黄と卵白をそれぞれ分けて別のボウルで泡立て、その後泡立てた卵黄と卵白を混ぜ合わせる工程が増えるため、手間がかかる作り方といえるでしょう。
生地の状態
共立て法で作る場合、卵の泡立てが終えた際の時点で流れて落ちるような動きのある状態になるため、薄力粉やバターを加えた後には型やプレートで焼き上げる際に流し入れやすい流動性のある生地となります。
別立て法で作る場合は、卵白をしっかりと泡立ててメレンゲをつくり、卵黄を加えていく作り方のため、メレンゲのおかげで共立て法よりも固く締まった泡立ちとなります。
しっかりと泡立てたメレンゲが加わることで、プレート上に生地を絞っても形をキープしたまま焼き上げることができます。
混ぜ方の違い
スポンジケーキをつくる際、共立て法と別立て法どちらも気泡をつぶさないように切るように混ぜ合わせていくことが基本になります。
ただしメレンゲのような固く締まった泡立ちであるほど、気泡が動きにくい状態であるため、混ぜ合わせることが難しいといえます。
別立て法で作った生地は、卵黄や薄力粉、バターなどを加える場合になじみにくく、しっかりと混ぜ残しがないように確認しながら混ぜ合わせる必要があります。
さっくりと切り混ぜるような混ぜ方のコツをつかむまでは、別立て法でつくる際は混ぜ合わせるのに苦戦してしまうかもしれません。
生地に材料を加えた後のなじみやすさ
流動性のある生地の方が材料となじみやすく、早く混ぜ合わせることができます。
そのためバターを加えて混ぜ合わせる際は、流動性のあるジェノワーズ生地の方がバターとなじみやすく、素早く混ぜ合わせることができるといえます。
とくにバターなどの油脂は混ぜるのに時間がかかってしまうと気泡が壊してしまうため、なじみやすいジェノワーズ生地はスポンジ生地の作り方にとってメリットになります。
ただし薄力粉を加える場合は少し違います。
薄力粉を加えてから生地を混ぜ合わせている際、薄力粉からグルテンというものが生地の中に作られます。
このグルテンはスポンジケーキにとって必要不可欠なものなのですが、混ぜすぎてしまうと多く作られ過ぎてしまい、それが結果として焼き上がりの膨らみを抑えてしまうのです。
別立て法で作る生地は薄力粉がなじみにくく、共立て法よりもグルテンが作られるのを抑えられるというメリットがあります。
つまり万が一に混ぜすぎても、別立て法で作る場合の方が膨らみが悪くなるなどの失敗が起こりにくく、膨らみやすい生地になりやすいということです。
どちらのつくり方を選ぶ?
共立て法を選ぶ
共立て法は別立て法よりも薄力粉などの粉類となじみやすく混ぜ合わせやすいため、出来上がりもきめの細かい生地となり、しっとりとしたスポンジ生地に仕上げることできます。
ただ全卵を使うため、湯せんで温めることで卵の温度に気を使ったり、卵を十分に泡立て気泡を多く含ませるなど、さらにきめの細かい気泡にそろえることが求められます。
生地の中への気泡の含ませ方によって、出来上がりに差が生まれやすいとも言えます。
基本的に溶かしバターを加える場合やお菓子づくりに慣れてきた方は共立て法をおすすめします。
別立て法を選ぶ
別立て法では一般的に、焼きあがったスポンジケーキが膨らんでいなかったり、へこみができてしまうなどのスポンジ生地に多く起こりやすい失敗を少なくすることが可能です。
卵白を泡立てる際は砂糖を何回かに分けて加え泡立て、しっかりとしたメレンゲを作ることが重要です。
とくにふわふわとした生地に作りたい場合やなるべく膨らみが悪いなどの失敗をしたくない場合には別立て法をお勧めします。
ただし薄力粉などと混ぜあわせる際には、生地がなじみにくく混ざりにくいので粉やバターの混ぜ残しで生地に固まりが残らないようにしっかりと混ぜ合わせることに注意しましょう。
まとめ
共立て法で作るスポンジ生地は別立て法で作るスポンジ生地よりも、バターを多く配合できることから風味やコクを強く出したい時、しっとり感を出してくちどけの良いお菓子に仕上げたい場合などには共立て法で作るほうが適しています。
一方で軽い食感を出したかったり、よりふんわりとした生地をつくりたい場合には別立て法を選びましょう。
また型やプレートに流し入れずに、絞り袋をつかってプレート上に好きな形に生地を絞りだすことができるなど使い勝手が良い生地のため、作りたいお菓子に利用する幅が広がります。
利用したい場面を考えて、最終的には食感の好みによって選ぶのがおすすめです。