スポンジケーキをつくる上で全卵の泡立てかたはとても重要です。
全卵の泡立てかたを間違えてしまうと、焼きあがったスポンジケーキがぜんぜん膨らんでいなかったり、きめの粗いくちどけの悪い生地になってしまう原因にもなります。
しかし、この段階でより多くの気泡を生地に含ませることできれば、失敗しにくくなるだけでなく、これからの作業がぐっとやりやすくなるのでしっかりと確認していきましょう。
よく膨らんだスポンジケーキをつくるためには
スポンジケーキといえばまず程よい弾力のあるやわらかい生地を思い浮かべると思います。
この弾力をつくりだしているのは卵のなかに含まれた空気の気泡です。
スポンジケーキの断面をみると、泡のように小さな気泡がいっぱい詰まった状態であることがわかります。
この気泡がオーブンの中で加熱されると膨らむ性質を持っているので生地全体を膨らませることができます。
簡単に言ってしまうと最初に全卵を泡立てる際に、より多くの気泡を含ませることができれば、ボリュームのあるスポンジケーキを焼き上げることができるのです。
ただ全卵を泡立てるためにはいくつかのポイントをおさえる必要があります。
スポンジ生地の条件
スポンジケーキを作るうえで上手な卵の泡立ちとは次の条件になります。
- 空気をたくさん含んでいる
- きめの細かい気泡である
- 気泡が均一にそろっている
空気をたくさん含んでいる
卵を泡立てて気泡を含ませても、そのあと薄力粉やバターなどの油脂を加えて混ぜていくことで、気泡がどんどん失われていきます。
スポンジケーキを上手に焼き上げるためには、オーブンで加熱するまでに、いかに生地に気泡を残せるかが重要となります。
そのため卵の泡立てが不十分だと、卵を泡立て終わった後に気泡をある程度含んで増えているように見えても、バターを混ぜ終えた後のころには気泡が少なくなり、結果膨らみの悪いスポンジケーキに焼き上がります。
ここでより多くの空気を含ませることが、スポンジケーキをつくるうえでのカギとなるのです。
きめの細かい気泡であること
きめの細かい気泡にすると、しっとりとした生地に仕上がりやすく、くちどけの良い食感になります。
また気泡の大きさは壊れにくさにも関係していて、小さく細かい気泡のほうが壊れにくいため生地のボリュームを最後までキープしやすくなります。
スポンジケーキのような気泡を利用した生地にとって、よりきめの細かい気泡であるほうが望ましいのです。
気泡が均一にそろっている
気泡が均一にそろっていることが、出来上がりのスポンジケーキの膨らみ方に違いをもたらします。
生地の中にある気泡の大きさが均一でない場合、オーブンの中で生地を加熱している間に生地内の大きな気泡が小さな気泡を取り込んでしまいます。
この大きさの違う気泡同士がくっついてしまうことで、より大きな気泡が作られてしまいます。
生地の中に大きな気泡ができてしまうと、焼きあがった際にその場所が大きな空洞となってしまうため、スポンジケーキの断面が粗い状態で焼きあがってしまう原因となります。
とくにスポンジケーキでは型に入れて焼き上げるため、生地が上方向にしか膨らむことができません。
そのため生地内の気泡が粗く、そろっていない状態だと中央部分が盛り上がってしまったり、ぼこぼことした表面に焼き上がってしまうことがあります。
きめの細かい気泡を均一にそろえることで、均一な高さに焼き上がりやすく、形の良いスポンジケーキが出来上がりやすくなります。
ミキサーを使う
基本的にスポンジ生地を作る際には、製菓用ミキサーまたはハンドミキサーをつかうことをおすすめします。
スポンジ生地は手立て(手で泡だて器を使って泡立てること)で作ることも可能ですが、均一に気泡を含ませるのは手立てではかなり難しく、失敗をする可能性が高くなります。
手立てとミキサーをつかったものでは、出来上がりの見た目からも違いが分かってしまうほど影響して、さらに美味しさや難易度にもおおきく関わるので注意が必要です。
スポンジケーキを作るための全卵の泡立て方
最初は高速で泡立てる
全卵の入ったボウルに砂糖を加えて軽くほぐしてから、ミキサーで高速でまわしていきます。
まずはしっかりと全卵を泡立てて空気をたくさん含ませます。
十分に泡立てることで、卵の中に空気をとりこんで気泡をつくり全体的にボリュームを出します。
最初は泡立ちやすいので注意
はじめは湯せんで温めたばかりで全卵の温度が高いため泡立ちやすく、すぐにボリュームが増え始めます。
けれど泡立てていくうちに、だんだんと泡立つスピードが落ちていきます。
全卵を泡立てる際は泡立てが終わるまでミキサーでも10分弱かかるので、ここで早めに速度を落としてしまうと気泡の量が少なくなってしまいます。
ポイントとして泡立てる初期段階では、まだまだ空気を含ませることができるため、泡立てをやめないように気をつけましょう。
目いっぱい泡立てる
失敗の原因の多くは泡立て不足による気泡の少なさです。
ここで泡立てて含ませた気泡の量が多ければ多いほど、最終工程までに気泡を一定数キープしやすくなるため、十分に泡立てましょう。
とくに混ぜ方に慣れていない方は、これぐらいでいいだろうと早めに泡立てをやめてしまわずに念入りに泡立てましょう。
徐々に回転を落とす
十分にボリュームが出るまで泡立てることができたら、中速・低速へと徐々に回転数をおさえていきます。
高速で泡立てて含ませた気泡は大きいため、速度を落として大きな気泡を細かくしていくことで、きめの細かな小さな気泡がいっぱいに詰まった生地となります。
きめの細かい気泡を含ませながら気泡の大きさが均一になるようにそろえていきます。
細かい気泡ほど安定した気泡になり壊れにくくなります。
安定した気泡を多く含ませることで、膨らまないなどの失敗が少なくなり、きめの細かい生地に仕上げることができます。
この段階で壊れにくい気泡を多く取り込めるかが、生地の出来を左右します。
中速から低速へ落とす
卵の中に空気が含まれると生地の色が白っぽくなります。
気泡が細かく、含んでいる量が多くなるにつれて白色に近づいてきて、しだいに生地の表面にはつやが出てきます。
中速から低速に落としてさらに気泡を細かくするときはつやを目安に速度を落としましょう。
中速や低速で長く泡立てすぎない
速度を落として泡立てるのはボリュームを出すためではなく、あくまで気泡のきめを細かくするために行います。
きめが細かくなるのはよいことですが、あまりに長い時間泡立ててしまうと逆にボリュームが少なくなってしまい、結果として膨らみの少ない出来上がりになることがあります。
つやが出るタイミングを見逃さないようにしましょう。
気泡を均一に
泡だて器を使ってボウルに沿って、ぐるぐると大きく円を描くように混ぜます。
この泡立ての最後に行う気泡の大きさを均一にそろえる作業のことをセレといいます。
空気を含ませる目的ではないので、泡立てるのではなく生地を均一な状態になじませるように混ぜましょう。
セレの目安の時間としては1分ほど混ぜることになります。
大きい気泡が残ってしまわないように注意しましょう。
生地内の気泡が均一になれば、ここで全卵の泡立ては終了となります。
見極め
泡立て終わりの生地の目安の状態のことをリュバン状、またはもったりする状態などと表現されます。
生地を垂らして確認
泡だて器などを使って生地をすくって垂らしてみます。
流れ落ちた生地が1~2秒間ほど表面に残る状態、または8の字を書くように垂らしてみて書き終わるころに、垂らしてできた8の字が消えていないくらいが泡立ちの目安の一つになります。
ゴムベラを使った方が多く、すくうことができ、分かりやすく見極めることができますよ。
すぐに8の字の跡が消えてしまう場合は泡立てが足りず、逆に8の字の跡が盛り上がったまま残ってしまった場合は泡立てすぎの状態といえます。
目安の状態
- ボリュームが出ている
- 気泡がきめ細かい状態で大きさが均一
- 白色に近くつやがある
ボウルの底で温度を確認
ボウルの底を下から、手で触り触れながら温度を確認します。
混ぜ終わるころに、温かさを感じない程度に温度が下がっていると好ましいです。
なぜなら温度が低いほど気泡は壊れにくくなるため、常温まで冷めているほうが生地が安定して、これから薄力粉やバターを加えて混ぜていく際に、気泡が壊れにくくなります。
まとめ
薄力粉やバターなどの油脂を加えてしまった後からでは、生地に気泡を含ませることできなくなります。
ここからはゴムベラで生地と混ぜ合わせたり、時間が過ぎていくほど気泡が壊れて減少していくことになります。
気泡を含ませることができるのはこの段階だけなので十分に泡立てることを心掛けてください。